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役職の降格に伴う賃金の減額の有効性について
2015年07月01日
東京地裁判決平成26年1月14日
ゼネラルマネージャー(以下、「GM」)として採用した男性従業員がセクハラ等GMとして不適切な行為を行ったとして、会社は当該従業員をGMから業務部マネージャーに異動(降格)させ、賃金の減額を行いました。当該従業員がGMの地位にあることの確認等を求めた訴訟で、裁判所は降格及び賃金の減額いずれも有効であるとの判断を示しました。
判断のポイント
降格については、複数の女性従業員の羞恥心を害するセクハラ行為を行っていたことが認められるうえ、裁判上は認定するまで至らない行為についても会社の聴聞会で特に争っていなかったことも併せて考慮すれば、業務全般を統括するGMとしての適格性が欠けるとした会社の判断に裁量の逸脱は認められないとして、有効と判断されました。
賃金の減額については、役職に応じて支払われる職務手当の減額と各人の職務遂行能力に応じて支給される職能給の減額が行われていたので、それぞれ分けて減額の有効性の検討が行われました。まず、職務手当の減額については、マネージャーの地位に変更されたことによりマネージャーに対する手当に変更されたのであって当然の措置であるとして有効性を認めました。また、職能給については、給与規程に勤務成績の著しく不良の者に対して降給(職能等級の引き下げ)できることを定めており、当該従業員はこれにあたるとして、職能等級の引き下げに伴う職務手当の減額についても有効性を認めました。
労務管理上の対策
上記裁判例では役職の降格に伴う賃金の減額の有効性の判断は、まず①役職の降格自体が有効か否かを判断し、次に役職の降格は有効として②役職の降格に伴う賃金の減額が有効か否かを判断するというように、2段階で判断をしています。したがって、賃金減額を伴う降格を検討する場合には、このような順序で有効性を検討することが有用です。
なお、上記裁判例の職能給のように各人の職務遂行能力に応じて支給される賃金(◯級□号棒などと職務遂行能力の格付けに応じて支給額が決定するもの)については、就業規則等に降給(職能等級の引き下げ)を予定する規定を設けていないと、原則として降給(職能等級の引き下げ)は行うことが出来ないと解されています。これは、各人の職務遂行能力に応じて支給される賃金制度はそもそも一度獲得した能力が低下することは無いという理解を前提としているためです。