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裁判でなぜ和解が成立するのか,不利な和解が成立する不思議

2017年07月06日

 民事裁判では,判決よりも和解で解決することもかなり多くなっています。今月は一般的には知られていない裁判上の和解についてお話ししたいと思います。
 和解にも二種類あり,心証開示型(裁判所の判決の見通しを告げる)和解と交渉型(当事者間の合意を媒介する)和解に分かれます。結論を判決で出すと妥当な結論が導けない場合に,交渉型の和解を裁判所は進めます。交渉型の和解の場合,本来勝ち筋側に譲歩させるわけですが,これがなぜうまくいく場合があるのか,不思議に思われませんか。判決で勝訴できるなら和解する必要はないと一般的には考えられるわけですから。
 交渉型の和解がうまく成立する場合を,親族間の紛争を例にとり説明しますと,①まず勝訴判決を得られる側が判決では親族間の争いが決着しないということに気づき,②裁判官が勝訴判決を得られる側に上手にアプローチをすることが交渉型の和解を成立させる決め手になる場合があります。
 ①についていえば,裁判は三審制ですから,理論的には3回争えますし,その問題が決着しても,当事者間で別の問題が起こればそれについて争えます。また,民事裁判で決着したことであっても,話し合いで更に調整しようとすることも可能です。つまり判決が一度出れば親族間の紛争が解決するとは限らず,恨みが続き紛争が永続する可能性があるのです。このことに裁判の過程で勝訴する側が気づくと和解の機運が高まります(特に負け筋側の代理人弁護士はこれを勝訴する側に気づかせるのも役割です)。
 ②についていえば,裁判所が,親族間の紛争の実態を的確に把握し,勝訴判決を得られる側のキーパーソンを見つけ出し和解の席に呼び(キーパーソンは裁判の当事者ではない場合もあります。特に親族間の事件では,当事者の配偶者がキーパーソンであるといったことがあります。),キーパーソンにもメリットのある和解案を考え(負け筋側の代理人弁護士は裁判官にキーパーソンを伝え,勝ち筋側も興味を示せる和解案を裁判所に提案するのも役割です),和解に十分な時間を費やすことです。このようにすると,本来和解など考えられない事案でも和解が成立することがあるのです。
 交渉型和解が成立すると当事者双方とも恨みの感情から解き放たれる(少なくとも軽減される)ことになります。親族間の紛争は当事者のメンタル面に多大な影響を与えるので,このメリットはかなり大きいものです。

 親族間の問題等なにかございましたら,お気軽に当事務所までご相談ください。