NEWS&TOPICS
パワーハラスメント対策について
2024年09月04日
パワーハラスメントが起こらないようにするためには、どのような行為がパワーハラスメントに該当しうるのか認識しておくことが、非常に大切になります。
最近の裁判例(京都地裁令和6年2月27日判決)で、参考となるものがありましたので、ご紹介いたします。
◆前提事情
当事者の関係などの前提事情を簡単に説明いたします。
◆仕事外しのハラスメントと判断されたこと
業務の都合で会議を廃止することはあり得、基本的には会議の主催権限のある者が廃止するかどうかをその裁量によって決められることが原則です。
しかし、この裁判例では、定例ミーティングを廃止したことが、仕事外しのハラスメントに当たると判断されました。どのような状況があると、会議を廃止すると仕事外しのハラスメントに該当すると判断されてしまうのか、ポイントをご紹介いたします。
平成30年6月15日までは、週1回健康相談室の定例ミーティングを行っていました。
同年6月18日に大阪北部地震があったためミーティングを中止し、6月25日に、上司YはAに対し、カルテ整理業務が終わるまで定例から随時に変更し、報告はメールでするように指示しました。
6月26日に、上司Yは、業務指示、連絡及び報告は原則メールで行うこととして、定例ミーティングを廃止しました。
裁判所は、カルテ整理業務については、メールでの報告で足りたとしても、Aの業務はカルテ整理業務だけでなく、定例ミーティングを廃止する前に、メールでの業務指示によって、上司YとAとの間で認識の齟齬が生じたという出来事があり、上司YとAとの間で認識を共有する手段としてメールのみに頼ることは限界があったとして、定例ミーティングの中止・廃止は、そのようにする業務上の必要性が高いとはいえず、不当な目的の下で行われた仕事外しに当たり得ると判断しました。
上司Yが定例ミーティングを廃止し、業務指示、連絡及び報告は原則メールで行うこととしたことは、カルテ整理業務については合理的な判断といえますが、Aの業務がカルテ整理業務だけではなく実際に支障が生じた事例も出ていたことから、部分最適・全体不適な判断となっています。
いくら会議の主催権限があるといっても、その判断について合理的に理由が説明できなければ、不当な目的があると判断されやすくなります。
したがって、会議を廃止する場合には、会議を廃止する必要性、及び会議を廃止した場合の業務上の支障の有無等を事前によく検討した上で、判断する必要があります。このことは、会議を廃止する場合だけでなく、業務指示や業務命令を出す場合にも当てはまりますので、参考にしてください。
行為者は、会社の人事部で産業医として勤務していた者(Y)です。
YとAは、組織上は人事部所属しているが、人事部から一定程度独立した健康相談室で勤務をしており、Aは、Yの指示を受けて就労をしていました。
上司Y(産業医) ― 指示 → 派遣社員A(保健師)
健康相談室では、健康診断の実施、事後指導、来室者への応急処置、救急対応、社員向け健康教育指導、職場巡視、安全衛生員会への出席・講話等を行っていました。
判決で認定されている事情から推測すると、上司Yは保健師を管理したいタイプであったのに対し、Aは前職と比べて管理がきついなど知人に述べていたため、上司YとAとの間で、それなりの軋轢が生じていたことが伺われます。
そして、Aが紹介予定派遣の派遣期間を終了しましたが、会社はAを直接雇用せず、その理由を「派遣期間6か月で産業医と円滑な協力体制の構築に至らなかったため」と説明しました。
こうした経緯もあり、Aは派遣期間中のYから受けた諸々の行為についてハラスメントに該当するとして、会社とYを相手に訴訟を提起しました。
派遣社員A ― 訴訟提起 → 会 社/上司Y