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【企業側|労務問題】「退職代行」から連絡が来たらどうする?|会社側が取るべき法的対応の正解<弁護士が解説>
2026年02月19日
「朝、突然見知らぬ業者から電話があり、従業員の退職を告げられた」 「本人と連絡が取れず、退職代行を名乗る者から書面が届いたが、どう返信すべきか」
近年、退職代行サービスを利用して即日離職を試みる従業員が急増しています。会社側としては「まずは本人と話したい」「引き継ぎはどうするのか」と困惑し、時には憤りを感じることもあるでしょう。
しかし、対応を誤ると「退職の無効」や「パワハラ」などの法的トラブルに発展したり、SNS等で「ブラック企業」として拡散されるリスクもあります。本記事では、退職代行から連絡が来た際に会社側が取るべき「正解」を、弁護士の視点で解説します。
❶| 退職代行から連絡が来た際の「3つの鉄則」
まず、突然の連絡に驚いて感情的な対応をすることは厳禁です。以下の3つの鉄則を守ってください。
❷| 相手方の属性による対応の違い
退職代行業者は、大きく分けて3つのタイプが存在します。
A. 民間業者(非弁リスクあり)
単に従業員の意思を「伝達」するだけの業者です。会社との交渉(有給消化の交渉や退職日の調整)を行う権限はありません。もし民間業者が交渉を行えば、弁護士法違反(非弁活動)の疑いが生じます。
B. 労働組合(ユニオン)
団体交渉権を背景に、退職条件の交渉を行ってきます。基本的には交渉に応じる必要がありますが、あくまで労働組合としての適正な活動範囲内であるかを見極める必要があります。
C. 弁護士
最も法的な拘束力が高いパターンです。残業代請求やハラスメントの損害賠償請求をセットで行ってくることが多く、会社側も弁護士を立てて対抗する必要があります。
❸| 会社が検討すべき「法的チェックポイント」
退職の意思表示を受けた際、以下の点を確認します
●退職の申入時期(2週間ルールの確認)
民法第627条第1項により、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の申し入れから2週間が経過すれば、会社の承諾がなくとも退職は成立します。「即日退職」を求められても、法的には2週間後が退職日となるのが原則です。
●有給休暇の消化
従業員が「残っている有給を全て消化して、今日から出社しない」と主張する場合、会社は原則としてこれを拒否できません。時季変更権(有給取得日をずらす権利)は、退職日が決まっている場合には行使が極めて困難だからです。
●引き継ぎと損害賠償請求
「無断欠勤に近い状態で辞められ、損害が出た」として損害賠償を検討したくなるケースもあります。しかし、裁判所は労働者の退職の自由を広く認めており、実際に損害賠償が認められるケースは「極めて悪質な嫌がらせ目的の退職」などに限定されます。現実的には、賠償請求よりも円満な事務手続きを優先すべきでしょう。
❹|会社側が取るべき具体的フロー
連絡を受けた後の推奨される流れは以下の通りです。
1. 退職届(書面)の提出を求める: 電話だけでなく、証拠として本人の署名捺印がある退職届を郵送させます。
2. 備品の返却指示: 健康保険証、社用PC、社員証などを郵送(レターパック等)で返却するよう伝えます。
3. 貸与金の精算や社宅の退去: 会社との間で金銭のやり取りや社宅契約がある場合、その処理を並行して進めます。
4. 離職票等の送付: 離職票の交付をもとめられたにもかかわらず、感情的になって離職票の発行を拒むことは違法(雇用保険法違反)です。淡々と手続きを進めましょう。
❺|「退職代行」を使わせない組織作りのために
退職代行を使われるということは、従業員が「会社に直接辞めたいと言えない(言ったら何をされるか分からない)」という恐怖や不信感を抱いているサインでもあります。
• 風通しの良い相談窓口の設置
• ハラスメントの根絶
• 適切な評価制度と面談の実施
これらを見直すことで、突然の離職による業務停止リスクを最小限に抑えることができます。
■ まとめ|トラブルを最小限に抑えるために
職代行から連絡が来ると、現場は混乱し、残された社員の負担も増大します。しかし、ここで強硬な態度に出ることは、会社にとって法的・社会的な二次被害を招くリスクしかありません。
「相手が不当な要求をしてきているのではないか」「どこまで交渉に応じるべきか」と迷われた際は、まずは弁護士にご相談ください。相手方の属性を見極め、会社を守るための最適な法的助言をいたします。



① 本人への直接連絡を控える
退職代行を利用する従業員は、会社との直接接触を強く拒絶しています。無理に電話をかけたり、自宅に押しかけたりすると、「追い込みをかけられた」として慰謝料請求の口実にされる恐れがあります。連絡は原則として、代行業者を窓口にするのが無難です。
② その場で「承諾」も「拒絶」もしない
「分かりました」と即答したり、「認めない!」と一蹴したりせず、「事実関係を確認し、社内で検討した上で回答します」と一旦電話を切るのが実務上の正解です。
③ 相手の「正体」を確認する
連絡してきた相手が「弁護士」か「労働組合」か「民間業者」かを確認してください。これによって、会社ができる対応の範囲が大きく変わります(後述します)。