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精神的不調により欠勤を続けている従業員に対する懲戒処分の可否

2015年05月01日

最高裁判所平成24年4月27日第二小法廷判決
当該従業員は,実際には事実として存在しないにもかかわらず,同僚らから嫌がらせを受けているという被害妄想があり,会社に休職を申し入れましたが,会社は休職を認めませんでした。そこで,当該従業員自身が嫌がらせ等の問題が解決されたと判断できない限り出勤しない旨を会社にあらかじめ伝えた上で,有休休暇を全て取得した後,約40日にわたり欠勤を続けました。会社は,当該従業員に対して,就業規則所定の懲戒事由である会社が正当な理由のない無断欠勤があったとの理由で諭旨退職の懲戒処分を行いましたが,就業規則所定の懲戒事由を欠き懲戒処分は無効であると判断されました。

ポイント
裁判所は,会社としては,精神科医による健康診断を実施するなどした上で(就業規則には,必要と認めるときに従業員に対し臨時に健康診断を行うことが出来る旨の定めがありました。),その診断結果等に応じて,必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し,その後の経過を見る等の対応を採るべきであり,このような対応を採ることなく懲戒処分の措置をとることは,精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応として適切なものとは言い難いと判断しています。

労務管理上の対策
就業規則の規定等の労働契約上の根拠なく,会社が従業員に対して受診命令を発することが出来るかは争いがあるところです。そのため,就業規則等の内容を確認して,受診命令を発する根拠規定が無い場合には,これを設けておくことが望ましいです。
また,特にメンタルヘルスに問題を抱えている人は,自身に問題があることを認識していない,またはそのことを認めようとしないこともあるため,直ちに受診命令を発してしまうと,そのことによりさらに症状が悪化する可能性もあります。そこで,メンタルヘルスに問題を抱える従業員に対しては,原則としてまずは受診を促し,それを当該従業員が拒否した場合に,受診命令を発するようにすべきと考えます。もっとも,状況が切迫しているなど直ちに受診命令を発する必要がある場合もありますので,原則にこだわり過ぎず,ケースに応じて柔軟に対応すべきです。