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組合員らの雇用問題等に関する団体交渉申入れに応じなかった派遣先会社は、労働組合法第7条の使用者に当たらないとした事案
2016年02月03日
中央労働委員会命令平成28年1月22日(平成26年(不再)第34号)
- 第1 事案の概要
- 本件は、会社のB工場で派遣労働者として就労していた組合員12名(「組合員ら」)の雇止め等に関する訴訟(「別件地位確認等訴訟」)の係属中に、組合が、同雇止めをめぐる事実関係等に関して団体交渉を申し入れた(「本件団交申入れ」)ところ、会社が、組合の提示している問題については司法的解決・判断を仰ぐなどとして応じなかったことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
- 初審神奈川県労委は、本件国交申入れは、組合員らの就労状況や事実関係の確認を求めるもので、組合員らの労働条件等を交渉事項とするものではないことなどから、会社が労働組合法上の使用者に当たるかどうかを問題とするまでもなく、会社に団体交渉応諾義務はないとして、救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。
- 第2 命令の概要
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主文
本件再審査申立てを棄却する。 -
判断要旨
(1) 本件団交申入れの趣旨について- ア. 本件団交申入れの前にも、組合は、会社に対し、団体交渉申入れないし要請等を行っており、その要求は、一貫して組合員らの雇止めに対する雇用問題の解決を求めるものであった。そして、これらの要求に対し、会社が組合員らの雇用主・使用者に当たらない旨主張したことから、組合は、会社における従前の就労の実態を明らかにし、会社に組合員らに対する雇用責任があることを示すために、本件団交申入れにおいて、組合員らが就労していたときの状況やそのときの会社の対応等を明らかにするよう求めたものと思われ、会社もこれを認識していたと認められる。
- イ. そうすると、本件団交申入れは、組合員らの雇用問題やこれに関連する従前の就労の実態等といった労働条件その他待遇に関して団体交渉を申し入れたものと解される。
(2) 会社は、本件団交申入れに関して、労働組合法第7条の使用者に当たるか。- ア. 組合員らは、申立外C社らの労働者としてB工場で就労していたから、会社と組合員らとの間に直接の雇用関係は存在せず、存在したこともない。
- イ. 本件団交申入れにおける交渉事項は、いずれも会社が組合員らの雇用主又は雇用主と同視し得る地位にあることを前提としたものといえ、会社がこのような団体交渉事項に応諾すべき義務が生じるといえるためには、組合員らの就労の諸条件にとどまらず、一連の雇用管理(採用、配置及び雇用の終了)に関する決定についても、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している必要がある。
しかし、一連の雇用の管理(採用、配置及び雇用の終了)に関する決定のうち、B工場の内部における配置に関しては、会社が一定程度の影響力を行使していたと認められるが、会社の支配力はその限りにとどまるものであり、会社は、上記を除き雇用の管理について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を行使していたとはいえない。 - ウ. また、組合は、組合員らの平成18年11月10日以前のB工場における就労に関し、その実態は労働者派遣であったのに、請負による就労として違法に取り扱っていたこと(偽装請負)を主張し、会社に組合員らの直接雇用の申込義務が生じており、会社は、組合員らとの関係において、「近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者」に当たると主張するものと思われる。
しかし、組合は、上記義務の発生要件を満たす事実を立証していない。また、組合の主張のとおり、組合員らの同日以前のB工場における就労が労働者派遣(偽装請負)であって、この期間を通算すると会社が派遣可能期間を超えて役務の提供を受けたことになるとしても、本件において、会社が派遣労働者の雇入れ(直接雇用)について、労働行政機関からの勧告等を受けたなどの特段の事情も認められない。
したがって、会社が「近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者」であるとはいえない。 - エ. よって、会社は、本件団交申入れに関して、労働組合法第7条の使用者に当たらない。
(3) 以上のとおり、会社が本件団交申入れに応じなかったことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
(出典:中央労働委員会平成28年1月25日付プレスリリース)
以上
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