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従業員代表者の要件

2020年10月15日

●従業員代表者の要件

 多くの企業では、労働者の過半数で組織する過半数組合がないので、時間外労働・休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)の締結や就業規則を変更する場合の意見聴取を行う相手方として、従業員代表者を選出する必要があります。
 ところが、相談などで事情をお伺いすると、従業員代表者の選出が適法な形で行われていない事例に接することが多々あります。
 特に、36協定を締結する際の従業員代表者が適法に選出されていないと、その影響は大きくなります。形式的に所轄労働基準監督署に36協定を提出していても、従業員代表者が適法に選出されていないと36協定は無効となり、その状態で時間外労働等をさせると違法となってしまいます。

 そこで、今号では、従業員代表者の要件と注意点などを説明します。

  1. 事業場ごとに選出すること
    従業員代表者は、原則として事業場ごとに選出する必要があります。事業場は、基本的に場所を基準に判断され、場所が異なれば別の事業場と取り扱われます。

    ◆ポイント
    36協定は、本社以外の事業場で作成していない企業もありますが、支社や支店などでも作成することが必要です。支社や支店などで36協定を作成していない場合には、今からでも作成して届出をしましょう。

  2. 労働者の過半数を代表していること
    従業員代表者は、事業場の労働者の過半数を代表している必要があります。ここで言う労働者は正社員だけではなく、パートやアルバイトなどの非正規労働者を含めた全従業員を言います。

    ◆ポイント
    これは適用対象者が限られている労使協定等を締結する場合であっても、適用対象者の過半数ではなく、全従業員の過半数を代表していることが必要です。
    たとえば、パートやアルバイトは時間外労働をさせないため、正社員のみを適用対象者として36協定を締結しようとする場合であっても、パートやアルバイトなどの非正規労働者を含めた全従業員が選出手続に参加し、その過半数の者が支持しているものでなければ従業員代表者になることは出来ません。

  3. 労働基準法第41号2号の管理監督者に該当しないこと
    管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。この管理監督者に該当する従業員は、使用者と一体的な立場と見られ、労働者を代表する者には相応しくないので、従業員代表者になることは出来ないとされています。

    ◆ポイント
    少なくとも会社内で管理監督者として取り扱われている者が、従業員代表者となることは避けるべきです。
    「工場長」や「支店長」など管理監督者に該当する可能性がある名称の者が従業員代表者になっていると、36協定等を労働基準監督署に提出した際に、労働基準監督官から当該従業員代表者が管理監督者に該当しないことを確認されることがあります。

  4. 民主的な手続で選出すること
    従業員代表者の選出手続は、労働者の過半数がその人の選出を指示していることが明確になる民主的な手続(投票、挙手、話し合い、持ち回り決議など)が採られていることが必要です。

    ◆ポイント
    2020年4月1日以降は、働き方改革関連法により労働基準法施行規則が改正され、従業員代表者が「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」という要件が明記され、民主的な手続で選出されているかという点が、より厳しく審査させる可能性があります。

  5. 従業員代表者選出の目的の明示
    どのような目的で従業員代表者となるのかが明らかになっていなければ、従業員代表者として適任か否かが判断できません。
    そのため、選出手続に先立ち、従業員代表者選出の目的(36協定の締結や就業規則変更の際の意見聴取など)を明らかにする必要があります。

    ◆ポイント
    社員親睦会や従業員会など、全従業員が加入している任意の団体の代表者などが、自動的に従業員代表者に選出されることになっている企業もあります。
    しかし、社員親睦会などの代表者は、前任者の指名であったり、従業員代表者となることが明示されずに選出されることが多くあります。
    社員親睦会などの代表者が従業員代表者となる場合には、きちんと民主的な手続で選出されているか、また選出に当たって従業員代表者となることが明示されていたかなどを、きちんと使用者側で確認する必要があります。
    確認をして、不備がある場合には、別途従業員代表者の選出手続を行うように従業員側に求めるようにしてください。