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社会保険の適用拡大

2022年10月06日

 2022年10月から短時間労働者に対する社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用が次のとおり拡大されます。

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 ※横スライド表示出来ます。

※ 事業所の人数要件
上記の「501人以上」「101人以上」の事業所の人数要件にカウントされる従業員は、①正社員などフルタイムで働く従業員及び②週の所定労働時間がフルタイムの4分3以上の従業員だけです。週の所定労働時間がフルタイム4分の3未満の短時間労働者の人数は、この事業所の人数要件ではカウントされませんので、間違えないように気を付けましょう。

 人数要件を満たす事業所では、対象短時間労働者の要件すべてを満たす短時間労働者を社会保険に加入させる義務が発生します。短時間労働者を社会保険に加入させると、社会保険の扶養から外れて、短時間労働者本人が被保険者として保険料(従業員負担分)を負担しなければならなくなり、保険料が給与から天引きされるため手取り額が減少します。このように、社会保険に加入させる際には、短時間労働者にデメリットがあることから、トラブルとならないように、事前に対象となる短時間労働者には説明をしておくべきです。

 ちなみに、ときどき、適用対象者の従業員から、社会保険に加入したくないと言われたのでどのように対応すればよいのかというご相談を受けることがあります。社会保険の適用対象者を社会保険に加入させることは、法令により事業主に課せられた義務ですので、労働者から加入したくないと言われたとしても、適用対象者である以上社会保険には加入させなければなりません。
 労働者と社会保険に加入しない合意をして加入させなかったとしても、後々下記の裁判例のように、労働者から損害賠償請求をされてしまうリスクがあります。


◆奈良地裁判決平成18年9月5日・労働判例925号53頁

  1. 資格取得の届出をしなかったことが労働契約上の債務不履行にあたる
    「法が上記のとおり事業主に対して被保険者の資格取得について各保険者に対する届出を義務付けたのは,これら保険制度への強制加入の原則を実現するためであると解されるところ,法がこのような強制加入の原則を採用したのは,これら保険制度の財政基盤を強化することが主たる目的であると解されるが,それのみに止まらず,当該事業所で使用される特定の労働者に対して保険給付を受ける権利を具体的に保障する目的をも有するものと解すべきであり,また,使用者たる事業主が被保険者資格を取得した個別の労働者に関してその届出をすることは,雇用契約を締結する労働者においても期待するのが通常であり,その期待は合理的なものというべきである。これらの事情からすれば,事業主が法の要求する前記の届出を怠ることは,被保険者資格を取得した当該労働者の法益をも直接に侵害する違法なものであり,労働契約上の債務不履行をも構成するものと解すべきである。」
  2. 労働者と合意があることは、事業主が届出を怠ったことを正当化しない
    「社会保険制度は,疾病や老齢等の様々な保険事故に対する危険を分散することにより社会構成員の生活を保障するものであるから,特定の者がその受益を放棄して負担を免れることとは本質的に相容れないものというべきであり,合意があることをもって当然にその届出義務の懈怠が正当化されるものということはできない。」

 上記の裁判例では、労働者との合意により当該労働者を社会保険に加入させなかったにもかかわらず、結果的に使用者は、労働者が被保険者資格の取得について届出をしていれば支払う必要のなかった保険料や、給付を受けられたはずの厚生年金の合計約641万円から、労働者が負担するはずであった保険料約254万円を控除した約387万円の支払いが命じられました。
 このように、社会保険に加入しないことで労働者と合意していたとしても、社会保険に加入させていないと労働契約上の債務不履行となり、後々労働者から損害賠償請求を受けて、多額の賠償金の支払いを命じられるおそれがあります。