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年次有給休暇に関するルール

2023年06月05日

◆年次有給休暇の付与日数
 年次有給休暇は、労働者が雇い入れ後6か月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上を出勤した場合には、原則として10日の年次有給休暇が発生します(労働基準法第39条第1項)。
 以降、1年ごとに全労働日の8割以上を出勤した場合、下記表の年次有給休暇が発生します(労働基準法第39条第2項)。

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 ※横スライド表示出来ます。

・短時間労働者の場合
 所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の短時間労働者の場合には、下記表の比例付与の対象となります(労働基準法第39条第3項、同法施行規則第24条の3第3項)。なお、週の所定労働時間が30時間以上、週所定労働日数が5日以上、年間の所定労働日数が217日以上のいずれかに該当する場合には、通常の労働者と同様の日数の付与が必要となります。

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 ※横スライド表示出来ます。

◆年次有給休暇の付与義務
 2019年4月以降、使用者は、年10日以上年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得させる義務が課されました(労働基準法第39条第7項)。
 労働者が自発的に年次有給休暇を取得しない場合には、使用者が時季を指定して取得させる必要があります。この使用者による時季指定にあたっては、労働者の意見を聴取する義務があります。ただし、意見を尊重するよう努める必要はありますが、必ずしも労働者が希望する日を指定しなければならないわけではありません。
 なお、労働者が自発的に5日以上有給休暇を既に請求・取得している場合には、使用者が時季指定をすることはできないとされています(労働基準法第39条第8項)。

◆年次有給休暇管理簿
 使用者は、労働者ごとに、①基準日、②年次有給休暇を取得した日数、及び③年次有給休暇を取得した日付を記載した書類(年次有給休暇管理簿)を作成しなければなりません(労働基準法施行規則第24条の7)。
 また、この年次有給休暇管理簿を、3年間保存する義務があります。
 年次有給休暇管理簿は、決まったフォーマットがあるわけではないので、各企業において管理しやすい方法で作成していただければ問題ありません。また、労働者名簿または賃金台帳に上記の必要項目を追加して、年次有給休暇管理簿とすることも可能です。

◆時季変更権
 年次有給休暇は、労働者が請求した時季に取得させることが原則ですが、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運用を妨げる場合においては、他の時季に与えることが出来るとされています(労働基準法第39条第5項)。この他の時季に与えることが出来ることを、時季変更権といいます。  ただし、実際に時季変更権の行使が有効とされるのは、極めて限られた場合です。裁判所は「事業の正常な運用を妨げる場合」とは、年休を取る日の仕事が、労働者の担当している業務や所属する部・課・係など、一定範囲の業務運営に不可欠であり、代わりの労働者を確保することが困難な状態を指すと解しています。ただし、恒常的な人手不足から、代員の確保が常に困難である状況である場合には、代わりの労働者を確保することが困難な状態とは言えないと解されています。  企業が必要な努力を行っても人材確保が大変厳しくなっている現状において、企業としては受け入れがたい判断ではありますが、裁判所がこのような判断をしているということはご留意ください。  なお、違法な時季変更権の行使を行った場合、不法行為による損害賠償責任が発生します。