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試用期間について

2023年12月05日

 試用期間とは、入社後一定期間を定めて、労働者の職務能力や適格性を評価して本採用するか否かを決定する制度です。
 この試用期間は、一般的なイメージと法的な仕組みとの間にギャップがあり、一般的なイメージに従った対応を行うと、大きなトラブルにつながる可能性があります。
 気をつけなければならない点について、以下で解説いたします。

◆①本採用拒否は基本的に解雇と同じ
 試用期間という言葉のイメージから、お試しの期間なので、実際に働いてもらって合わなければ、期間満了時に当然に退職してもらえる(雇用契約を終了できる)と思われるかもしれません。しかし、試用期間の途中や満了時に本採用を拒否することは、法的には解雇と位置付けられています。
 したがって、本採用拒否するか否かを判断するに当たっては、基本的には解雇が有効に行えるか否かと同じように判断をすべきです。
◆②採用後14日以内に本採用拒否をしても当然に有効となるわけではない
 採用後14日以内に本採用拒否すれば有効になると思っていたという話を伺うことが年に何回かあります。
 これは、労働基準法第21条により、試用期間中の者を採用後14日以内に解雇(本採用拒否)する場合には解雇予告が不要とされていることを、本採用拒否自体も有効になると誤解したものだと思われます。
 しかし、上記①のとおり、本採用拒否も基本的に解雇と同じですので、採用後14日以内に本採用拒否したからと言って当然に有効となるものではなく、本採用拒否を有効とする事情が存在するのかどうかにより有効性が判断されます。
◆③採用時までに分かっていた事情によって本採用拒否をすることはできない
 本採用拒否が許されるのは、採用時には知ることが出来ず、または知ることが期待できないような事情でなければならないので、採用時までに明らかになっていた事情によっては本採用拒否をすることは許されません(最高裁判決昭和48年12月12日)。
 例えば、実務経験がないことを分かって採用した場合には、時間をかけて育成することが予定されていたと考えられることから、実務経験が無いことによる多少の問題があったとしても、概ね誠実に勤務していたといえるような場合には、本採用拒否が無効となる可能性が高くなります。
 そのため、とりあえず試してみてダメだったら本採用拒否すればいいと思って不適格が疑われる者を採用することは、絶対に行うべきではありません。
◆④試用期間の途中で本採用拒否を行うと無効となるリスクが高まることがある
 試用期間中の労働者の不適格が明確になった場合には、試用期間の途中でも本採用拒否を行うことは可能です。
 しかし、不適格の理由が能力不足である場合には、試用期間の途中で本採用拒否を行うことは慎重に検討すべきです。能力不足の場合、残りの試用期間中に改善する可能性があるため、十分に教育指導したが能力不足の程度が残りの期間では改善する見込みがないといえないと、無効となるリスクが高まるためです。
 実際に、改善可能性があるとして試用期間を20日残した段階での本採用拒否を無効とした裁判例(東京地裁判決平成21年10月15日)もあります。

 このように正しく法的な仕組みを理解していないとトラブルつながる試用期間ですが、上手に活用できれば企業側の武器にもなる制度です。試用期間の運用については専門的な知識が必要となりますので、ご心配な点がある場合には、ぜひご相談ください。